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私は2、3回深呼吸をして、ゆっくりインターホンに手を伸ばす。


毎日毎日、帰るたびにここまで緊張するのって、いったい何なんだろう。



『……お帰りなさいませ、すぐに開けますからお待ちください』



インターホンから聞こえてきたこの家の使用人、典子(のりこ)さんの声に、私は少し安心する。


しばらくして開かれたこの家──屋敷と呼ぶ方がふさわしいかもしれない──の扉が開かれた。



「ただいま、典子さん」


「お帰りなさいませ、美弥様。皆様居間に集まっていらっしゃいますが……無理して挨拶に行く必要はないかと…」



最後の方は小さな声でそう言われた。



「ありがとうございます。でも、行かなかったら行かなかったであれなんで…」



私は典子さんに学校の鞄を渡して、重い足取りで居間の方に向かう。


気持ちを静めるために一度深く息を吸ってから、居間の戸を開く。



「美弥です…ただいま戻りました」