ケータイ小説 野いちご

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スクエア・ラブ

1年 4月・5月・6月
2節 失恋の悲しみと喜びと


「着席してくださーい」

教室内に入ってきた、スーツ姿の男性――相沢善文。

ざわざわと、教室内が騒めき始める。

言われるまま、生徒たちは席につくが騒めきは止まない。

「はい、えーっと、まずは入学おめでとうございます。これから3年間、充実した学生生活を送ってください」

「先生!」

ピッと片手を挙げ、呼び掛ける秋人。

「はい?」

「先生、名前は?」

「ああ」

思い出したように、善文が言う。

「今年から、この学校に勤務することになりました、相沢善文といいます。皆とは同じ1年生になります。一緒にいろんなことを学んでいきましょう」

「でも先生担任じゃないんでしょう?」

秋人が言う。

「よくご存じで」

ははは、と善文は笑う。

「今日のところは、僕のことは連絡係とでも思ってください」

「じゃあ、僕らの担任教えてください!」

「それはできません」

「えー、ケチー。連絡係なら連絡してよー」

秋人が口を尖らせるも、善文は笑うだけ。

「教えてあげたいのはやまやまだけど、僕も知らなくて」

「なーんだ、残念」

「それじゃあ、連絡事項を伝えたいと思うんだけど、いいかな?」

「はーい!」

「元気な返事ありがとう」

善文によって、連絡事項が伝えられていく。

そして放課後、善文が教室を出ると、クラス中善文の話題で持ち切りとなった。

「礼子礼子! 今の先生! かっこいい!」

「はいはい。美雪はああいうタイプが好きだよね」

「ああいうタイプ?」

いまいちピンと来ないようで、美雪は首を傾げる。

「あんたが好きそうな人は大体予想できる」

「うん。なんか、わかる気がする」

礼子の言葉に、隆が同意を示す。

「早川君も、比嘉さんもわかりやすいよね」

「えー? 2人の好きなタイプ? そういえばそういう話、聞いたことない」

美雪の答えに、隆がクツクツと笑う。

「それは君が自分で気づくべきことじゃないかな。ドンマイ、お2人さん」

言い残し、隆は教室を出て行く。

「ねぇねぇ、今のどういうこと?」

人がまばらになった教室で、美雪は問う。

「…知らない」

礼子は言う。

「ねぇ、冬行」

「さ、さあ…」

冬行はそう言い、目をそらす。

「じゃあ、いいや」

2人から解答を濁されたせいで、美雪の興味はなくなったらしく、すでに別のことを考えている。

「やっぱり、言って来ようかな…」

ポツリと、そんなことを呟く。

「うん。やっぱり早い方がいいよね! 私、ちょっと行ってくる!」

言うが早いか、美雪は教室を飛び出した。

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