頼くんに会いたい。
私を突き動かすのは、その気持ちだけ。
だけど、それだけで十分だ。
あれもこれも、は要らない。
頼くんに会いたい気持ち、会いたい理由、それさえ自分が見失わなければ……
あとはどうだっていい。
電話をかけようか迷いながら、だけど直接顔を見て話したくて。
今、変に声を聞いてしまったら、勢いで電話口の告白をしてしまいそうで。
頼くんに、電話をするのはやめにした。
そして、
「……着いた」
たどり着いた頼くんの家。
勉強会をしたあの日以来、初めてくる。
今日は土曜日。
頼くんのご両親だっているかもしれない。
そう思うと、涼くんと別れる時には満タンだったはずのラブパワーも少しばかり勢いをなくした。
インターホンに向けて手を伸ばして、ドキドキ破裂寸前の胸を反対の手で抑える。
周りの音が遠くに感じて、頭の中では頼くんの意地悪な笑顔が永遠リピート再生されるんだから堪らない。
早く、会いたい。
だけど、会いたくない。
……気持ちを伝えることの怖さと、頼くんへの愛おしさが私の中に矛盾を生む。