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考えてしまうのは、頼くんのこと。

思い出すのも、頼くんのこと。


キスの意味は結局、聞けないまま。

家に帰ってからも頭の中は、頼くんとのキスでいっぱいで、鼻に残る頼くんの匂いに、胸がギューッと苦しくなった。


本当はもっと、さ?
涼くんと勉強会できた喜びを噛み締めるべきだと思う。


それなのに、涼くんよりもずっとずっと、私の奥底に住み着いて、私を内側からコントロールするのは……。



「頼くん……」



知らぬうちにその名前を声に出してハッとする。


休み時間だっていうのに、やけに人の多い教室の中で、今日何度目か分からないボーッとタイム。


あーもう!しっかりしろ、私!
気づけばボーッとしてるし、そういう時は大抵頼くんのことばっかり考えちゃうし。


……これじゃ、まるで私が頼くんを好きみたいだ。ううん、まさか!だって頼くんは航と同じ弟みたいなもんで……!


それに、私には涼くんっていう大好きな人がいるんだから。


そうだよ、ありえない。

ありえない……。



……本当に?