それからの一ヶ月は、僕たちにとって生涯で一番輝かしい夏だった。

僕たちは狂ったように遊んだ。
渡のアルバイトのない日はほとんど毎日どこかに出かけた。
パチンコをしてみた。友達の中型を借りて、二人で街中走った。
知らないラーメン屋は全部入り、味を比べた。

サッカーも見に行った。
当時、ワールドカップを翌年に控え、国内のサッカー熱は盛り上がっていた頃だ。
また、ちょうど僕たちの街をホームにするサッカーチームがあったので、サッカーは身近なスポーツだった。
ホームだからという理由でサポーターぶって試合を見にいったけれど、実際僕も渡もサッカーは基本ルール程度しか知らない。有名な選手の名前すら知らずによく行ったものだ。

バスは混んでいたし、スタジアムは暑かった。
単純な僕たちは周囲の熱狂に釣られ、大騒ぎで応援した。帰り道、すっかりサッカーで盛り上がったと思ったら、次はドームにナイターを見に行こうという話になる。言い出したのは渡だ。

「そうだなあ、今シーズン中に一回は」

僕が答えると、渡は肩をすくめた。

「でも、野球ってほとんどわかんないんだけどな」

「じゃあ、なんで行きたいんだよ」

「行ったら好きになるかもしれないだろ?今日のサッカーみたいに」

その発言はなかなか前向きで、渡にしては明るいなと僕は嬉しかった。