雪の上には、なぜかなぞの足跡がある。ここはとある温泉旅館で、取材のためたまたま来ていた私、香坂解夫(コウサカトキオはこんなところでも事件を解かなければいけなくなってしまった。

「まず、アリバイの確認だあ!最初は君だ。」

「は、はい。名前は中山光枝。二十三才で、事件当時は買い物をしていました。」

「それを証明する人は?」

「ええ、多分ですけどスーパーの店員の方が覚えていると…。」

「解夫先輩。たしかにスーパーの店員が証言しています。」

「そ、そうかぁ。」

こいつはあまりあやしくはないな。言葉がつまる事はないし、顔からしてもそうでもない。

「次!お前だぁ!」

「はい。自分すかぁ?自分は古井圭太。二十九才っすネ。あん時はたしか、マッサージしてたっス。防犯カメラに写ってるんじゃないんすかね?」

「ええ、やはり、防犯カメラがとらえていますね。先輩。」

こいつは、少しばかりあやしい。言葉づかいもあらいし、何より人の目を見てしゃべっていない。まぁ、
まだ一人いるしな。

「早く、早く、次だあ!」

「な、なによぉ。名前は鈴山涼子。四十五才よ。」

「アリバイは?」

「私は、一人で部屋で本を読んでいたわ。」

「それを証明する人は?」

「い、いないわよ。部屋に防犯カメラがあれば分かるけどね。」

「部屋に防犯カメラはありません。」