「若、石橋が見えて参りました」

主道路から脇道に入り、幅広い堀沿いの道を半周ほど走ったところで、運転手の声がスピーカーから届く。

清が橋を渡るよう告げると、リムジンは指示通り進み、渡り切ったところでスピードを落とし、静かに一時停止する。

「榊原様、お待ちしておりました」

アイアンゲート前で守衛らしき人物が運転手に声を掛け、乗車者を確認する。

「なぁ、確かシェアハウスに向かっているんだよな。何、この厳戒態勢」

ゲートが静かに開かれ、再び車は走り出すが、ベンツは付いてこない。