「いくら俺でも報道の自由は止められない。まぁ、当然だろう。あんな派手なことをしたんだから、このぐらい」

パーティー翌日の早朝、則武は新聞とノートパソコンを手に、清の邸宅を訪れていた。当然、裕樹の姿もある。

「謎の美女現る! マリー・アントワネットの正体は! だって。よく撮れているね、この写真」

裕樹はファ~と大きな欠伸を一つし、おトヨさんが淹れてくれた、ブルーマウンテンを美味しそうに啜る。

「誰がリークしたんだろ? 招待客の誰かだよね」
「嗚呼、マスコミ、シャットアウトだったからな。案外、市之助氏かもよ」

それはあり得る、と裕樹はコクリと頷く。

「こんなにデカデカと載っちゃって、琶子先生が見たら卒倒もんだぞ! って、それより、こっちだ!」

則武はパソコンを開くと、そこに写る清の姿を指差した。

「あっ、これ、あの時の写真だ」

裕樹はパソコンを覗き込み、これもよく撮れてるねっ、と感心する。

そこにはレッドカーペット上で、琶子の顔を手で覆い肩を抱く清が、彼女を熱く見つめ、優しく微笑みかける姿が写っていた。

『スキャンダル発覚! 榊原市之助の孫、榊原清、意中のお相手は誰?』

「大層な見出しだね、清、初スキャンダル、おめでとう!」

裕樹がパチパチと手を叩く。
則武は、何を言っているんだ! とその頭に拳固を一つ落とす。

「全く、これだから恋愛初心者は困るんだよな。この件で世界中が大ごとになっているぞ、どうする気だ」

清は書類にサインをしながら、何でもないように言う。

「言いたい奴には言わせておけ」
「言いたい奴ばかりだから、どうするんだ、と聞いている」
「別にどうもしない。その方が則武だって好都合では?」

ん? と則武は宙を見る。そして、ハッと清を見る。