「んっ」

(重い……)

身体を動かすと、シーツの衣擦れの音とともにごろんと私のお腹の上から、巧の腕が落ちる。

目が覚めたら、同じベッドに巧が眠っている。
そんな日がもう月に何度もあった。

(……きちんとした関係でもないのにベッドに忍び込むとはなんてやつなんだ!)
幼馴染以上。
親公認の婚約者未満?

クエスチョンマークが付くのは、私達がお互い明確にしたことはないまま、こんな風にいつも一緒に居るからだったりする。

男の癖に長い睫毛。けれど、目力が強いのか普段は全く気付かないな。
高く整った鼻梁。私の父親である社長の隣に立つと腰の位置が違い過ぎる長い足。
180センチあるという。ヒールを履いた私と並ぶと、頭一つ高い。

愛想笑いは得意なので、うちの会社で一番人気がある。
甘いマスクの、次期社長。それだけで女子社員には王子様みたいな存在だった。

私の前ではこんなふうに無防備で、全然格好いいところは見せてくれないのに。