水車が回り、鹿おどしの音が響き、錦鯉がたうたう池を小さな橋がかかり、移ろう四季の葉が水面に落ちていく。
都会だと忘れてしまう、日本の四季が閉じ込められた美しい庭園。

私が簡単にそう説明すると、キースとその部下も興味深く頷いてその庭を感慨深げに見ていた。

此方としては、社長が来るまでの時間稼ぎだったのだけれど、約束の時間になっても来ない。

「シノ、池の向こう側は?」

「向こう側はちょっと離れて式場みたい。早い時間だと赤い傘を差した着物の花嫁が見られるようだよ」

「へえ。見てみたいね」

目を凝らしてキースが見るのが、ちょっと少年っぽい無邪気さで可愛いと思えた。
私が微笑んでいるのに気づいたのか、キースがこっちを見た後、じっと何か私の何かを見ている。

「な、何?」
「シノはゴージャスなドレスも似合うけど、着物姿も美しいだろうね」

「あ、はは。ありがとう」
『昨日、進展はあったのか聞いても大丈夫?』


キースがにこにこと攻撃してきて固まった。
副社長には聞き取れないようなネイティブな英語で聞いてくるのがキースらしい。
『ふふ。どうでしょう』

キースに強がっても仕方ないのに、誤魔化して笑ってしまった。