テレビでキャスターとコメンテーターが話している。


――どうしてこのような見るに堪えないことをしたのでしょう?

……分かりませんねぇ。
信じられない。まだ未来のある中学生を狙うなんて。

――この事件については、警察が犯人の目撃情報を――………



ユウは慌てテレビを消した。彼女は犯人が誰なのか大体分かっているからだ。

「メッタ刺しなんて怖いよねぇ……。 ユウも気をつけなよ」

いきなり母が話しかけるのだから、ユウは思わず飛びあがってしまった。

「あ……うん」
「何よ、飛びあがっちゃって。もしかして犯人知ってるの?」

体が震えるのが分かった。絶対に言ってはいけない。犯人はユウの友達なのだから。

「ち、違うよ。狙われたらどうしようって思って……」
「そっか……そう」

そう言うと、母は台所に戻り夕飯の支度をまた始めた。


どうしてあの映画を見てしまったのだろう、とユウは後悔していた。

あの映画さえ見なければ、こんな惨事は起こらず、穏やかで平和な毎日を送っていたのに。

あの映画を見た次の日から、いつもの日常は壊れた。