麻尋には、2つの家族がいる。

1つは生んでくれた家族。1つは育ててくれた家族。

生んでくれた家族は、麻尋が生まれてすぐに死んじゃった。

育ててくれた家族は、4才の頃から5才までの1年間。でも、その里親の事情で、5才になる日に施設に戻された。

......あたしの家族は、いない。今は、いない。

いや、ほんとうに家族はいたのかな... ?

家族って、何?

自問自答しながら、ようやくついたあたしの家。『ひまわり』 。

大きめの一軒家が2つ繋がっていて、1つは園児の。もう1つは施設長の家。

赤い屋根に、古そうな壁。玄関の横には、窓が並んでいて、風でガタガタと音をたてている。

「...はぁ。」

ため息をつくと、玄関のドアを開けた。