そこそこ新しそうなマンションの一室、間取りはたぶん1DKってところだろうか。
そんなに広くはない部屋だけど、男性のひとり暮らしにしては整頓されてる方だと思う。


色味の少ないインテリアに囲まれたものの中に、ひとつだけ色鮮やかなものがあった。

水草水槽だ。


目立つので部屋に入ってすぐに見つけられた。
隅っこに追いやられているテレビよりも、少し小さいくらいのサイズの水槽。

その中に、静かに揺れる水草。


思っていたのと、ちょっと違っていた。


なんとなく漠然と、水草水槽って言うくらいだから、緑色の草がひょろっと生えていて、イメージ的には海の中の海藻みたいにゆらゆらしてるものと思っていた。


だけど、水槽の中には流木とか岩があって、隙間を縫うように色々な種類の小さな水草が生えていて、海藻とは全然違うものだった。

なんというか、ただ水草が生えているだけじゃなく、きちんとしたインテリアのひとつという感じ。
水槽の脇にごっつい装置もつけてあって、手が込んでそうだと思った。


「なんか…………イメージと違いました」

「え?何が?」


水槽の真ん前に座って、まじまじと隅々まで中にどんな形のどんな色した水草が生息しているのか観察してしまう。
私の率直な感想を、沖田さんはキッチンの方から聞き返してきた。

彼を見ることもなく、私の視線は水槽に釘付けである。


光も当ててあるし、なんか不思議な形の細長い機械も入ってるし、他にも泡がたくさん出てるのもあるし。
これって何?
電気代とかけっこうかかりそう。


余計なことを考えていたら、沖田さんがいつの間にか隣に来ていたらしく一緒になって水槽を眺めていた。


「綺麗でしょ、水草」

「思ってたよりも、ずっと」

「これ完成するまで数ヶ月かかったもん。大変だった」

「数ヶ月!?」


ひとりで驚いていると、沖田さんは落ち着いた様子で手招きした。


「コーヒー淹れたよ」


なんだかすみません、とつぶやきつつ立ち上がった。