翌朝はレグナムがリーラの部屋まで迎えに来た。



 落ち着いた深い緑の品の良いドレスに身を包み、いつも軽く編んで下ろしている髪をきっちりとまとめあげて準備を整えたリーラは、レグナムの後について謁見の間へ向かった。



 謁見の間の扉の前には衛兵が四人。


事前にリーラが来ることを聞いていたようで、リーラを見ると何も言わずとも大きく重たそうな扉を開けてくれた。



「姫、参りましょう」



 レグナムが言って、リーラに先を促す。


ここから先はリーラが前を歩く。



 カツン、とひときわ高い足音が謁見の間に響き、整列した男たちが一斉に振り返った。



 ざわざわと騒がしかった空間が静まり返る。


コツン、コツンと、リーラの靴のヒールが大理石の床を叩く音だけが、三階分はある高い天井にこだまする。



 床も、壁も天井も、すべて真っ白い大理石で囲まれた円形の広い部屋には、日の昇る東側に玉座、西の扉と東の玉座を結ぶ通路を挟んで北は武の官、南は文の官が玉座のほうを向いて整列する。


玉座は二十七段の階段の上にある。


階段の上の二つの玉座の並ぶ空間を「真実の丘」と呼び、王と王妃、そしてそれを守る選ばれた近衛兵以外は、階段の一段につま先をかけることすら許されない。


階段の真下には宰相が立つ。


文武の両官吏たちを取り囲むように、壁に沿って円形に神官たちが並ぶ。


謁見の間には毎朝、およそ三百に上る王宮に勤める官吏や軍の要人が集まる。