東端の島国ウィオンが、先代国王の治世から続く鎖国に終止符を打ったのは、つい二年ほど前のこと。


現王アルザがクーデターの末に父王を退け王座に着き、真先に開国を宣言したという。



 実に三十年ぶりの通商を再開したウィオンの、即位一年の若き王に、いち早く縁談を持ちかけたのが、ウィオンと海を挟んで真西にあるシュタインの王――リーラの父だった。



 齢十九の若きアルザ王に、齢十六という似合いの年頃のリーラ姫。


開国したばかりで通商の基盤がまだ脆弱なウィオンにとって、地理的に大陸への入り口にあたるイスラ北半島のシュタインの後援は必要不可欠。


さらにシュタインと手を結ぶことで、イスラ南半島のルイーネを二国で挟むことになり、ウィオンにとってもシュタインにとっても、ルイーネへの大きな牽制となる。


両国にとって悪くない話だった。



 とんとん拍子に進んだ縁談の末、アルザ王の治世が二年目を迎えるこの年の夏、両国の友好の証たるシュタインの姫が、ウィオンに輿入れした。


民の期待を一身に受け、見目麗しい王の手を取り、緑豊かな美しい国に迎えられた、幸福な姫君として。



――の、はずだったが。