初夏の緑の萌える頃、その船は港に到着した。



 ヴェルフェリア大陸最東端、“ヴェルフィ・エンデ(世界の果て)”と言われるイスラ半島の、さらに東の果て。


“翠の島”ウィオンはその日、大陸から花嫁を迎えた。



 紺地に金糸で薔薇の刺繍を施した旗が、風に舞って翻る。


それは半島の国シュタインから来た、第一王女の紋様。



 港にずらりと並んだ軍服の男たちと、その後ろから、興味津々で遠巻きに眺める港町の民。


彼らを背に、悠々と立つ緑の髪の男の名は、アルザ・ロード・ウィオン。


――島国ウィオンの王である。



 やがて兵士たちを従えて船から降りてきたのは、金の絹糸のような髪をもつ姫だった。



 アルザは一歩、二歩、前に出る。


そしてゆっくりと右手を持ち上げて、花嫁に手を差し伸べた。



 姫はしずしずと王の前に歩み出る。


そして左手をそっと、アルザの右手に重ねた。