それから2週間が経った。

1学期末のテストは悪くなく、お母さんからのおとがめもなかった。「今回はよかったけど、気を抜かないようにね」と最後にちゃっかり言われたけれど、その表情はこころなしかやわらかかったように思う。

舞川さんからは、あのあと、ことの真相を聞いた。

あの事件があった日、舞川さんは、美術室でミサキ先輩が桐谷先輩の絵を黒絵具とカッターナイフを使ってめちゃくちゃにしているところを目撃したらしい。舞川さんはすぐにミサキ先輩のもとに駆け寄って止めさせようとしたけれど、もうあとの祭りで、その上、『バラしたら、水島沙希をイタイ目に合わせるから』と脅されたとのことだった。

その理由が桐谷先輩だと知った舞川さんは、私と桐谷先輩をなるべく遠ざけようと思ったそうだ。ミサキ先輩が犯人だって思わせないように、推薦材料の話をしたのもそのころだ。

その際、桐谷先輩からは逆に不審がられて、真実を話したこと、そして、私には言わないほうがいいと判断したことを説明してくれた。
けれども、私の黒絵の具とペインティングナイフが仕込まれたことに腹を立て、約束と違うとミサキ先輩に言いにいった。そこで、私と鉢合わせになったとのことだった。

舞川さんからは、最後に、「ごめんね」と謝られた。私を守ろうとしてくれていたのに。謝ったりお礼を言ったりすべきは私なのに。

舞川さんのことを少しだけ疑っていた私は、自分がとてつもなく浅はかではずかしい人間に思えた。