「貴島、昨日は大丈夫だったの?」


次の日、朝の会が始まる前くらいに聞いた。貴島と話すのは女子の目が気になるけど、それでも何か貴島に話しかけたくなる時がある。


「はははっ……空腹状態なのに食べ物を見ると食べたくなくなるんだ……特に炭水化物」


貴島はげっそりとしている。可哀想に……ちゃんと瑠歌の食べ方の事言っておけば良かったな……。


「これあげる。あと、脱水症状には気を付けて」


私は栄養補給のゼリーを渡した。登校中に買っておいた物だ。本当は校則違反だけど、同級生の目を避けてササっと買ったのだ。


「いいのかい?」


「うん」


ありがとうと言って、貴島は苦しげに笑った。それでもその時の貴島は少し顔色がよくなっていた気がする。
でも、あれだけじゃ足りないだろうな……。


「おーい、錦柑子ー!戦車で登校するなー!」


みんなが窓に集まり瑠歌を見る。貴島は錦柑子と聞くだけで気分が悪くなっていた。


「こら撃つんじゃない!幼稚園児が集まって来ただろ!この飴どうするつもりだ!」


砲には砲弾の代わりに飴を詰め込んだらしい。瑠歌は毎日変わった登校をする。最初の方は蝶の羽を付ける程度だったけど、今は大層なものに乗ろうとする。


「チッ父さんめ……余計なもの与えやがって……」


貴島の目に光が宿っていなかった。怖い。