「おーいお前ら座れー! 転校生が来るからなー!」


 先生がそう言って教卓をバンバンと叩く。それを聞いてみんな座ったけどざわついている。


「どんな人だろー?」


「男子? 女子?」


 転校生か……なんか面倒なことになりそうだ。


「気になるだろうが今は凄い転校生とだけ言っておく。よし、入っていいぞ!」


 ドアが開いてそこから入ってきたのは、背の高い男子だった。
 日本人の中でも珍しいくらい真っ黒な髪で、切れ長の目。他とは違う雰囲気のイケメンだった。


「(きしま とうや)貴島 灯夜です。これからよろしくお願いします」


 貴島が自己紹介をすると、女子がキャアキャアうるさくなった。


「落ち着け! えー貴島はフランスから来たんだっけ……」


「はい。その前はイギリスにいました。久しぶりに日本語で話すことが出来て嬉しいです」


 そんな経歴なら外国語もペラペラだと思われ、女子から感嘆の声が上がる。ああ、英語の平均点上げられるな。


「そんじゃ、何か好きな食べ物とか趣味についてどうぞ」


「趣味はフェンシングです。自宅は試合できるようになっているため、勝負なら受けて立ちますよ」


 それでまた女子がうるさくなる。男子はいらついている。私は思った。自分の立場を守るためには貴島に近づかない方がいいと。


「席だが……どこにしよ」


 今から考える先生に、先に決めとけよとツッコミが入る。そういえば、私の席隣がいないんだった。やだなー来られたら。周りに人がいないのって楽だし、貴島が隣に来たら女子がうるさい。


「あ、早霜の隣空いてる。よし、貴島あそこ行け」



 先生は容赦なく私の隣を指差した。最悪だ。くじは当たらないのにこういう嫌なことは当たる。


「うわーいいなー親奈」


「いくら転校生がかっこいいからって授業中とかに話しちゃだめだよー」


 女子は目が笑っていなかった。男子はなんかしらんけどニヤニヤ笑っていた。


「これからよろしく。(はやしも しんな)早霜 親奈さん」


 貴島は王子様みたいなキラキラした笑顔で言った。