体育館の中にはなき声が聞こえてきていた。


ついさっきまでの穏やかな雰囲気は消え去り、今は緊張と絶望に包み込まれていた。


あたしたちは透明な部屋の周囲に座り、男の次の指示を待つしかなった。


「朱里……」


彩美が涙声であたしの名前を呼ぶ。


「何?」


「朱里が言ってたこと、本当だったんだね……」

「うん」


あたしは頷いた。


「翔吾君ってさ……」


そこまで言い、彩美は口を閉じた。


みんなには、翔吾は何も言わずに引っ越したということにされていた。


「死んだよ。奴隷部屋で」


あたしはなんの感情も込めずにそう言った。


本当は胸がはち切れそうなくらい苦しかったけれど、今取り乱す事はできなかった。


「そう……だったんだ……」


彩美は目に涙を浮かべて俯いた。


自分が暮らしてきた街が、こんな殺戮をしていたなんて知れば、誰だって悲しくなるだろう。


信じていたのに、裏切られたんだ。


それも、最低なやり方で。