それ以降彩美との会話はないまま、時間は過ぎて行った。


外は黒い壁で覆われていて時間の感覚がわからないが、時計の針は夕方の6時を指していた。


「もうこんな時間なんだ……」


誰かがそう呟いた。


普段ならもう家に帰っている時間だ。


「そろそろ誰か気が付いてくれないかな?」


そんな声も聞こえて来る。


<mother>が用意周到に準備していることを知らない生徒たちは、みんな外にいる家族や友人が助けてくれると思っているのだ。


でも、そんなのは期待するだけ無駄だ。


<mother>はどんなことにも対応できるように計画している。


あたしたちがこのバトルを終えるまで家に帰らなくたって、誰も心配なんてしない。


ぼんやりと時計の針を眺めていた時だった。


ステージ上にスーツの男が現れて、ハッと息を飲んだ。


「それでは3回目のバトルを開始します」


男の声に生徒たちがステージに視線を送る。


その表情は疲れていたり、恐怖で歪んでいたり、怒りをあらわにしたりしている。


それぞれがスーツの男への感情をそのまま顔に出している状態だ。


「今日最後のバトルです! みなさん盛り上がって行きましょう!!」


スーツの男がそう言うと、仲間の男の2人が拍手した。