ケータイ小説 野いちご

ありったけの嘘、とっておきの愛。

嘘だとしても



「麻衣、食べたいものある? アイス買ってようか?」


さっきから海斗はスーツを脱ぎ、シャツの袖をクルクルとまき。
甲斐甲斐しく私の世話を焼いている。
海斗のベッドに寝かされた私は、そんな海斗を眺めながらクスッと笑う。


「病人じゃないんだけどな」


ポツリと呟いた私の頬を、海斗はぺチぺチと優しく叩く。
視線がぶつかり、海斗の顔がゆっくりと私に近づいて来た。
唇を重ねる瞬間。
私は、本田様の事を思い出す。


全身鳥肌が立つくらい気持ちが悪かった、あの舌触りと肌を這う唇。
忘れたくても忘れられない感覚。
奪われた唇に残る、何とも言えない嫌悪感と罪悪感。


「だめっ」


咄嗟に両手で自分の唇を覆っていた。
汚れた私の唇を、海斗に触れさせたくないと思ってしまったのだ。

そんな私の行動を、海斗は理解してくれたのか。
唇を覆っていた両手を、そっと外した。


「俺が怖い? 本田と同じ男だから」

「違う、違うの。私、本田様に……」


言いかけた私の唇に、海斗は何も言わず唇を押し当て口を塞いだ。


「本田が触れた唇だから、俺にキスさせないとか言われると、逆にムカつくんだけど」

「んーーっ」


固く結んだ唇をこじ開け、どんなに逃げても海斗は私を捕まえてくる。
そんな追いかけっこみたいなキスを繰り返しているうちに、全身の力が抜け。
無意識のうちに、私は海斗の首に手を回していた。


< 155/ 184 >