ケータイ小説 野いちご

ありったけの嘘、とっておきの愛。

ずっとずっと



うーん。
非常に仕事がやり難い。
これも公私共に四六時中一緒に居るからなのか。
それとも、そう思っているのは私だけなのか?


「香坂、ちょっと来い」


社長室では、表面上いつもと変わらない海斗が、眉間にしわを寄せ私を呼ぶ。
隣りに座って仕事をしている新堂さんは、少しハラハラした様に私を見送った。


海斗と生活を共にするようになり、社内では極力私情を挟まない様に気を付けている。
社長室には新堂さんも常に一緒に居るし、油断して親し気にしたら一発で海斗と私の関係がバレてしまう危険があるからだ。

海斗も、それを見越してなのか。
二人きりで過ごしている時の、甘えた態度や言葉は微塵も感じさせない。
むしろ今まで以上に、私に対して厳しく冷たい態度を貫く様に、接し方を崩さなかった。


「なんでしょうか、海斗社長」


ただ、グループ秘書の藤村さんをはじめ、周囲が海斗の事を「海斗社長」と呼んでいたから、うっかり名前を呼んでしまっても、急いで「社長」と付け加えれば済む事は、私にとって救いだった。


「午後からの会議は、新堂だけを連れていく。君は桜ヶ丘店に行ってくれ」

「桜ヶ丘店ですか?」


またどうして急に?
私にとっては古巣だから、久しぶりに顔を出せる事は嬉しいけど。

海斗の出席する会議には、私も新堂さんと共に行動するのが当然の様になっていて。
降って沸いた突然の話に驚いてしまった。


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