* * . 【 篠原 彩乃Side】 . * *


「あんたって…… バカなの?」



放課後の図書室。

自習をするにも自習室があるし、品揃えが悪いこの図書室で本を借りる人なんて0に近い。


そう、私はいま彼と2人っきりなのだ。



毒づいた彼の方を見ると私が背伸びしても届かなかった本を手にして意地悪な笑みを浮かべる彼。


約1年ぶりに見たその笑みとそのセリフ。
涙が出そうになったけどなんとか堪える。



「バカじゃ、…ないもん」



顔は見れないから斜め下を見ながら唇を尖らせる。



「背伸びして届かないなら脚立とか持って来て取ればいいじゃん。ほんとバカ」



いつも意地悪な言葉ばかり言って、だけどいつも助けてくれる彼。



「……八野(やの)くん、ありがとう」


「いーえ。どういたしまして」



八野 蜜季(やの みつき)くん。

クール…いや、ものすごく冷たい彼は一匹狼で誰も寄せ付けない。

だけど、本当は意地悪でとっても優しい彼。