「私、中野未来。宜しくね」


 中学校に入学して、隣の席になった子に、話しかけられた。

 周りにはもっと明るい子や、可愛い子がいるのに、なんで僕なんだろうと思いながら、宜しくと言って差し出された手をとり握手をした。


「僕は、七星。七星彩音」

「彩音っていうんだ。可愛い名前だね。あ、自分のこと僕って言ってるの? 女の子だよね?」

「ありがと。女であってるよ。私って言うの、似合わないって言われたことがあってさ」

「ああ、それで僕なんだ。別にいいと思うけどな、私でも」


 可愛い名前なんて、初めて言われたな。顔に合わない名前だとは言われたことがあるけど。

 今どき、自分のこと俺とか僕って言ってる人くらい、珍しくないだろうに。そういうの敏感な子なのかな。


「部活はもう決めた?」

「僕は入らないよ」

「えぇ、せっかく部活盛んなのに勿体ない」


 そんなに驚くことだろうか。部活は強制ではないから、入らない人くらい他にもいるだろう。


「中野さんは?」

「未来でいいよ、堅苦しいの嫌だし。美術部にしたよ。絵、描くの好きなんだ」


 名前呼び捨て……中学はそういうノリはダメなのかと思ってた。

 そうか、美術部か。


「バレー部とかかと思った」

「え、なんで」


 不思議そうな顔をする未来。


「運動部とか似合いそう」

「そう?」

「そうだよ。髪型とか、陸上部も似合う」

「初めて言われたよ」