その夜。


相変わらず狼は私を避けているようだったが、狐に「嫌ってはいないはずだ」と言われたことで少しは気持ちが楽だった。



――今日こそは。



夕食の席で、私はこぶしを握り締めた。


今日こそは、こんな生活とおさらばするんだから。


一言も話すことなく食事を終えた彼が、湯浴みをしに浴室へ向かう。


私はその間に、彼から与えられた自室で今日すべきことを脳内でシミュレーションした。



夜中になったら、狼の部屋へ行く。


眠っている彼に、そっとキスを。


逃げ出そうとしたら、そこで彼を押さえつけて、自分の気持ちを素直に告げる。



自分の気持ち――。



もう、迷わない。


私は、彼のことが好きだから。