まだ幼かった頃の、曖昧な記憶。


当時は七歳か八歳くらいだっただろうか。



その日私は、病気の祖母のために野いちごを摘もうと森へ向かっていた。


でも、途中で道を間違えた私は、「不浄の森」と呼ばれる危険な森に足を踏み入れてしまった。



不浄の森――それは日光がほとんど届かず、昼間でもまるで夕暮れのように薄暗い森。


人間は一人も住んでいなくて、そこにいるのは獣人だけ。


獣人は一見すると人間のような見た目だが、耳と尻尾が生えているのが大きな特徴だ。


街の人々は彼らのことを「汚らわしき者たち」という。



彼らが本当に汚らわしいかどうかは定かではないが、とにかく薄暗くて今にも魔物が出そうな、そんな不気味な森に迷い込んでしまった私は、木の根元にへたり込んで大声で泣いていた。


そんな時。



「ピーピーうるさいガキだな。人間は街へ帰りな」