最初に涼と出会ったのは中2の
部活見学の時間だった

体育館の周りをランしながら
1人だけなぜかゴールポストを
見てる涼が気になってしまった
凄く整った顔立ちをしていて
1番落ち着いた印象を最初は受けた


まぁ実際は違ったんだけど


その時の1年生は思った以上に
人数が多くて大変だった

顧問と3年の部長と副部長は
あたしと小学校から一緒の新谷律に
教育係を命じてくる

3年は夏休みに入る前に世代を交代する
次の部長と副部長はあたしと律になると
言われていたからだ

15人いる1年生を律と2人で分け
体育館の入り方から全てを
1か月かけて教えていく
涼は律のグループの中にいた



涼は明らかに1年生の中でも別格だった

大体の子達は筋トレの種類を
覚えるのにも手間取る
ランの名前であったり、あとは順番
確実にこなしていくのは
涼ただ1人だけだった

この頃から涼の存在は
あたしらや先輩の代にも
知られるようになる

涼は明らかな経験者だった

3年の部長の提案でその日部活にいた
1年生同士で試合をさせようと言われた

あたしと律が審判を務め
3年生は舞台上から見学していた

多分涼の事を見るための
提案だったと思う


小学校でクラブをしていた子が
いたので何とか試合にはなっていたが
ただの玉遊びだった

3年の先輩達は見るに見かねたのか
何人かの1年生を下がらせて
コートに入っていく

この時明らかに涼の顔が笑っていたのを
あたしは見たんだ

1年生同士でやっていた時よりも
明らかに涼の動きが変わっていく
というか別人だった

涼はとにかくスピードが速い
その上背が低いので
気付いた時にはすでにゴール下だ
先輩も何もお構いなしで
点を取りに来る

その日涼は部長と副部長に
呼び出されていた


もしかしたらと律と心配したけど
次の日の部活にもちゃんと顔を出して
いたので、特に気にしなかった

そんな折、あたしは幼馴染で
男子バスケ部の部長でもある
1つ年上の白石太一から相談を受ける

好きな子が出来た

そう言いながら図体のデカイ男が
照れくさそうに話す姿に呆れた
バスケをしている時とは
全く別人のいつもの太一だった

太一は元々あたしの住んでいる
マンションにいた
小さい時から律と太一とは
よく一緒に遊んでいたので
年上と言う感じは一切なかった


部活の中では一応先輩の手前
後輩らしく振舞っていたが
ここは太一の部屋なので問題ない
あたしは太一のベットに座って
明らかに嫌な顔をした


頼む!!協力してくれ!


自分の部屋の床で正座をしながら
太一はあたしに手を合わせ拝む

無理に決まってんでしょ?
どう考えてもあたしが行くのは
おかしいもん!

だからなんか考えてくれよ!
俺が他の女子に相談出来るわけないだろ?

太一は昔からあたしと律しか
女の子と遊んだ事がない

そんな太一が一目惚れをしたそうだ
しかも相手は1年生
相手の名前を片瀬愛と言った


その片瀬さんをまるでアイドルのように
話す太一に呆れながら
あたしは別の事を考えていた

太一のお姫様は涼と同じクラスだった

あたしと涼は挨拶はすれど
言葉を交わす事はない
あたしの頭の中に邪な考えが浮かぶ


うちの部の真山さんってわかる?


いや、わかるも何も有名じゃん!
つかなんであの子レギュラーにしないの?

まだあたしの権限はないもん!
それに1年だし!


お前も俺も1年でレギュラーだったじゃん

わかってるよ!話聞かないなら辞めるよ

いや、待って聞くから!
そのチビちゃんがどうかしたのか?

確かその子と同じクラスだったはず?

マヂかよ?!じゃあチビちゃんに頼むわ!

はぁ?あんたがいきなり行ったら
怯えるに決まってんでしょ!

まぁ、そうか‥

とりあえず明日あたしが真山さんを
呼び出して協力してもうように
言うから!

助かるよ!お願いいたします!



あたしは次の日ボールの片付けを
している涼に近づく

涼はあたしに声をかけられ
フリーズしていた

〈あたしってそんなに怖いのかな?


話したい事があるから門の前で
待っててくれないかな?

涼は怯えたよう目であたしを見て
一緒懸命首を縦に振っていた

〈まぁ無理もないか‥


あたしは一旦教室に戻ってから
部長らと別れ、門に向かう

あたしの言い付け通り門の前に涼はいた
何かからかわれているみたいで
クラスの子らしい男子に
次々と蹴りを入れていく


あたしは後ろからそれを見ながら
涼に声をかける


元気だね、待たせてごめんね

涼はあたしの顔を見るなり
赤くなったり、青くなったりして
アワアワしながら挨拶をする


凄く可愛く思えた

いきなり涼の視線があたしから外れて
更に硬直していく


あたしは嫌な予感がした

太一が後ろから走ってくる

2人で帰りたくてワザと連絡しなかったのに

太一に文句を言われながら
あたしは涼を連れて
学校近くの公園に向かう

涼は完全に怯え切っていた

こうなる事が、わかっていたから
せっかくあたしが仲良くなってから
切りだそうとしてたのに


太一に便乗して自分の邪な考えも
叶えてしまおうとした罰なのか

しかも公園についてから
太一はなかなか話だそうとはしないし

段々とイライラしてきたあたしが
涼に教える

好きなんだって!その片瀬さんの事

涼はなぜか少し呆れたような顔を
していた

まあ、無理もないだろう
こんな図体だけがデカイ男が
モジモジと照れながら好きな子の
話をしてるんだから

涼は太一からの提案を聞いて
助けてくれと言わんばかりの目で
あたしを見てきた

あたしは涼に太一を殴れと
ジェスチャーする

一瞬目を丸くした涼は
次の瞬間、笑顔になり笑った


あたしにその笑顔に心を撃ち抜かれて
自分の気持ちに確信を持ってしまう

あたしは後輩でしかも女の子である
真山涼を好きになってしまったのだ