高校に入学して1か月がたった

憧れのブランド《JK》になったのに
特にあたしは何か変わる事もなくて
JKなのに特に可愛い子も教室にはいなくて
可愛い片瀬さんともクラスが違って
その前に片瀬さんはヤバくて


でも新しい友達は増えたし
中学校が一緒の子らも何人かいたので
浮く事もなくクラスに馴染み始めていた

このまま何事もなく淡々と日々は
過ぎて行くんだろうなー
あーいい加減彼女欲しいなーって
考えながらお弁当を食べ終わり
机で昼寝をしてる時だった


クラスが一瞬ざわついて静かになる

あたしはそれに気づいて机から
顔を上げた

ん?

その視線の先にいたのは
仁王立ちで腕組みをし、あたしを見下ろす
茅野芽衣元部長様だった

あ‥
いきなりの状況で目が点になる

あ、じゃないし!!

相変わらず茅野さんは凄く美人なので
美人が怒ると迫力があるなーと
思いながら茅野さんを見てた


‥なんで来ないの?

い‥や‥ちょっと‥
あたしは茅野さんから目を逸らす

LINEしたよね?
スルーしてたけど?

はい‥
耐え切れずに下を向く

じゃあなんで??

〈ヤバイ!すごく怖い、つか中学の
時だってこんなに怒られた事はないぞ

怖すぎて涙目になる

‥授業終わったら校門で待ってて
茅野さんは呆れたように言う

‥えっ?!

返事は?

‥は、はい

あたしの返事を聞いて茅野さんは
教室から出て行く

茅野さんが去った後中学から一緒の
原田絵理があたしの所に来る

涼、もしかして部活見学行かなかったの?

うん‥

うわー!それはヤバイでしょ?

ヤバイかな‥?

ヤバイよ!だって涼がバスケ部に
入るって絶対思ってるよね?
あの人、元部長でしょ?

‥そうなんだよね

なんで入んないの?

しんどいから‥
あたしはそのまま、また机に突っ伏す


あたしのバスケ熱は何故か中学卒業と
同時にスーッとどこかに消えていった

バスケ自体が嫌いになった訳ではない

ただ学校でやるバスケに楽しさが
なくなっただけで現に学校外でやる
チームバスケにはちゃんと出ていた

〈どーしよー

午後の授業にやる気が出る訳がなく
あたしはそのままずっと窓の外を
見ていた

あたしが座っている席は窓際で
運動場がよく見える

〈片瀬さんのクラスが体育だったよね

視線で片瀬さんを探すが
さすがに遠すぎて見えない

まあ、見える訳がない
ここは1年の教室で4階だから


授業が終わりあたしは鞄を持つ

今からあの怖い部長の説教が
待っていると思うと足が重い

階段を降りようとすると後ろから
声をかけられる

涼ちゃん!

聞き覚えのある声に振り向くと
立っていたのは片瀬さんだった


片瀬さんは高校に入ると何故か
巻き髪くるくるで化粧をして
スカートが短くなり足が丸見えの
立派なJKギャルになっていました
これも白石さんの趣味らしいです

あたしは気付かれないように
片瀬さんの上から下までを見て
溜息をついた

〈あんなに清楚な感じだったのになー
時の流れって怖いわ


涼ちゃん部活見学サボったんだって?

あーやっぱり知ってるよね
あたしは視線を合わせずに言う

まぁ、太一君からだけどね
やんないの?バスケ?

だって‥高校ぐらい遊びたいし

まぁねー!部活入っちゃったら
土日はどころか他の休みまで消えるもんね

〈あたしだって‥

大丈夫?一緒に帰る?

片瀬さんは下を向くあたしを
覗きこむように聞いてくる

茅野さんに呼び出されてる

うわー!ご愁傷様です
じゃあまたLINEで報告して!

片瀬さんは両手を合わせて
あたしを拝み階段を降りて行く
パンツが見えそうだった

いやチラっと見えた

〈ピンクか‥可愛い

あたしが部活に入らない理由
それはしんどいってのもあるけど
1番は他の問題だった

〈遊びたい!!彼女が欲しい!!

これに尽きる

中1の時に片瀬さんを好きになってから
あたしはバスケに夢中になり
あとの2年半ぐらいは誰も好きに
ならなかった

物好きな奴もいたもんで告白も
何人かにはされたんだけど
あたしは端から男に興味がない


部活が忙しいと言う理由で全て断った

漫画の世界でもないので
可愛い後輩が出来る訳でもなく
ましてやそんな可愛い後輩に
告られるエロゲ的なイベントも
起きるはずもなく

このまま高校でも部活なんかしちゃったら
絶対あたしの青春は終わってしまう

高校生の休みを、せっかくの休日を
汗にまみれた部室で過ごしたくない

これがあたしの本音です

あたしの心は立派に童貞真っ只中なんです

〈こんな事茅野さんに言える訳がない


そんな事を考えてる間に足は門の
レールをまたいでいた


どこ行くの?

その静かな声にあたしはビクッとなり
恐る恐る振り向く


さっきとは違い少し不敵に笑みを浮かべ
門の石垣に背を保たれさせて腕組みを
している茅野さんがいた

まさか‥帰る気じゃないよね?

〈あああもう本当に怖いです

いや‥考え事してました
〈これは本当だから‥

はぁ‥とりあえず行こう

はい‥

あたし達の高校は中学から然程
離れていなくて歩いて20分ぐらいの距離

みんなは自転車とかで通学してるけど
あたしは歩きだった
遅刻しそうな時だけ自転車に乗る


茅野さんも歩きらしくあたしより
少し前を歩く

あたしは茅野さんに追いつき並ぶ
茅野さんはあたしを少し見上げる

こんなに背だって伸びたのに‥

少し困ったような顔で言う

中1の時155ぐらいしかなかったあたしは
それからグングン伸び始めて

今は174になっていた
茅野さんは168で止まったらしい

それから、また無言になって歩く
茅野さんの足が止まり
あのマンションの前だった

あれから一緒に帰った事なかったもんな


まだ理由聞いてないんだから‥

そう言って茅野さんはあたしの
手を引き自分の家に連れて行くため
マンションの中に入る

で、あたしは咄嗟に気づく
初めて女の子と手を繋いだって事に

〈まあ、これは連行されてるだけだけど

そんな思いとは裏腹に心臓さんは
ちゃっかりドキドキしていた

茅野さんの家に入り玄関のすぐ横の
部屋へ通される

ベットにでも座ってて

そう言って茅野さんは部屋から出て行く

で、あたしはまた気づく

女の子の部屋に入るのもこれが初めてだと

〈まあこれも説教部屋なんだよね‥
でもそれでも心臓さんはちゃっかりと‥

これが彼女の部屋ならどれだけ
萌えると思ってんだ
ベットの上でゴロゴロしちゃうんだぞ
あたしはそういう事がしたいんだ

そんな妄想を膨らませていると
茅野さんが部屋に入ってくる
慌てて顔を元に戻す

ベットに座ってくれてよかったのに

いや、ここでいいです

あたしは今から怒られますとばかりに
床に正座していた

小さなテーブルを挟んで
ベットを背もたれにし茅野さんが座る
あたしがコーヒーを好きな事は
覚えてくれてるみたいだった

アイスでいいよね?

あたしの前にコップを置く

はい、ありがとうございます

やっと顔を上げて茅野さんを見る
少し悲しそうな顔をしていた

なんで入んないの?

いや、しんどいですし‥

中学の時だってしんどかったでしょ?
それにスルーされると傷つく!

すいません、なんて返したらいいか
わかんなくて‥

バスケ嫌になったの?


そういうのじゃないんですけど

また顔を見れなくなって視線を逸らす
〈学校以外でもバスケは出来るからなー

それか‥あたしの事嫌になった?

その質問にビックリして茅野さんを見た

〈そんな事一度も考えた事ない
つか茅野さんを嫌になる訳がない

それは絶対にないです!!
あたしは語気を強めて目を見て言った

そっか‥ならよかった

その言葉に茅野さんはホッとしたように
顔が柔らかくなる

〈あれ?待って‥

もしかしたら嫌われたんじゃないかなー
って思ってたの‥
あたしが卒業してから
会えてなかったし‥

少し節目がちに言葉を続ける茅野さんから
あたしは目が離せなくなる

〈いやいや、待って‥何これ?

嫌いになんてなる訳ないですよ

そう言いながらあたしの心臓さんは
今まで以上に飛び跳ね暴れる


その言葉に何も言わず茅野さんは
笑顔をあたしに向けた

茅野さんの後ろに花が見えてくる


〈今さら?つか今さらなの?嘘でしょ?
〈散々部活で一緒にいたのに?!
〈下着姿も見た事あるのに?
〈なんなら合宿で風呂にも入ったし
〈裸だって何回も見た事あるのに?
〈つか寝る時に隣とかも余裕であったのに‥

嘘でしょ

頭の中で思考がグルグル回る


‥涼?

あたしを呼ぶその声にハッとなり我に返る

あ、いやすいません‥

どうしたの?具合悪い?

えっ?! いや大丈夫ですよ!

あたしはとりあえず落ち着くために
入れてもらったコーヒーを飲む
顔が火照りだしてくるのがわかる
〈ダメだ! 落ち着かなきゃ

茅野さんの手があたしの頬に触れる

〈あっ‥

顔熱いよ?大丈夫?

あたしはその手に自分の手を重ねる
その冷たい手に心臓が少しヒヤッとして
静かになっていく気がした

‥涼?

ごめんなさい‥帰ります

えっ? あ、うん‥

こんな風にいきなり誰かを意識するなんて
今までなかったのに

あたしの次の恋はいきなり始まってしまった