「全員、席に着いてー新しい先生が来るからねー」

クラスのリーダー的存在の橋本 未環(はしもと みわ)が呼びかける。

ここは2年3組。あまり目立たないクラスだが、地味な生徒が多いというわけではない。特に目立った活躍が無いから目立たないのだ。目立った悪事ならあるが、この学年はほとんどのクラスが何かしらやらかしているのでその中に埋もれる。喧嘩は無いけど全員が仲良くも無い。そんなクラスだった。

このクラスの最初の担任、山梨 美歩(やまなし みほ)は長期の無断欠勤をしている。今も連絡が取れていない。

「あー山ちゃんよりいい先生なんていないよー」

木崎 優名(きざき ゆうな)が頬杖をつきながら言う。優名は地味な人だと思われがちだが、仲のいい友達と話すときはハイになっている。

「ほんとそれな。せめてくそな奴じゃないといいんだが……」

極度の教師と勉強嫌いの升山 仁意那(ますやま にいな)が、伸びた爪で机を突きながら言う。可愛い名前に似合わずネット中毒者で性格は内弁慶。男子からは嫌われていて悪口もよく言われているが、それを告げ口して男子の成績を落とそうとしている。

チャイムが鳴って、丁度ドアが開いた。入ってきたのは真っすぐな茶髪の、背の高い男だった。

「おはようございます。今日から君たちの担任になる、まあ山梨先生の代わりですが……錐山 将(きりやま まさるです」

自己紹介が続き、錐山は真面目でいい先生なんだと多くの生徒が思った。しかし、気に入らないと思っている生徒もいた。