「今日の朝刊に出ていた社長のインタビュー記事、読んだか?」

「ああ。今回のプロジェクトのことを熱く語ってたよな」

「無茶な納期を押しつけられて、どうなることかと必死だったけど、無事に納品できてよかったよなあ」

「ああ。俺、神田課長が強引に受注した時には『終わった』って覚悟したんだ」

「俺も。だけど、神田課長の力でこのプロジェクトは成功したようなもんだし、同じ男として神田課長に惚れたかも」

近くに座っている男性社員たちの言葉が耳に入り、私もこっそりと頷いた。

この数カ月間、休日返上で取り組んでいたシステム開発が終了し、納品も完了した。

開発のために発足したプロジェクトも、近いうちに解散することとなる。

質の高い仕事をやり遂げた達成感からか、午後から行われている経営企画部の部内会議では、いつになく明るい言葉が飛び交い、広い会議室は穏やかな空気が満ちていた。

ここ『ワンシステム』は、あらゆる企業のシステム開発を業務の柱とし、その中でも金融業や通信業向けのシステム構築を得意としている。

また、継続的な顧客との関係を築くことにも重きを置き、サーバーやネットワークの安定した運用のサポートも行っている。
 
私が勤務する本社と全国各地にある支店に在籍する社員は、合わせて五千人ほどで、毎年順調に売り上げを伸ばしている業界大手の会社だ。