俺は時々、思うことがある。
実は俺以外の人間のどこかにはバッテリーが内蔵できるようなところがあり、みんな人間ではなく"ロボット"なんじゃないかって―。
いや、仮にロボットじゃなくても、俺達はプログラミングされたロボットのようなものだ。その中でも俺は"量産機"。代わりはいくらでも、いる。使い物にならなくなったら廃棄処分され、そして、俺の代わりのロボットが新しく入る。ただ、それだけの話だ。
したくもない仕事をし、顔を会わせたくもない上司と顔を会わせ、家に帰っても労をねぎらってくれる家族もいない。
いっそのこと廃棄処分された方が幾分かマシだ、と思う日もある―。
「おい!鈴木。ちょっと来い」
佐藤部長だ。あの声は、また怒られるに違いない。まったくもって憂鬱だ。
「はい。お呼びでしょうか」
「この書類を作成したのはお前だな?」
「はい。たしかに私ですが、何か不備でもございましたでしょうか?」
「"何か不備でもございましたでしょうか?"じゃないんだよ!ここの数字!!桁が1つ多いんだよ!!お前は会社を潰す気か!!だいたいお前、ちゃんと確認したのか!?」
「申し訳ございません。私の確認不足でございます」
「お前、今年で何年になる?」
「はい?」
「入社して何年になるんだ?と訊いてるんだ!何度も同じことを言わせるな!!」
「申し訳ございません。今年で・・・5年目に、なります」
「いい加減、こういう初歩的なミスはやめてくれないか?私に今更こんなこと言わせないでくれ。頼むよ、鈴木」
「・・・申し訳ございません」
周りの視線が痛い。声は聞こえないけど、俺にはみんなの笑い声が、心の声が聞こえる。
―使えねぇな、あいつ
―また怒られてるよ、あいつ
―いい加減、辞めればいいのに
俺は耳を塞ぎたくなるような衝動に駆られた。依然として佐藤部長の怒号が室内に響き渡っている。無駄にうるさい。
―消えてしまいたい
そう、思った。