それから1時間ほど歩いた頃、周囲にコンビニやファミリーレストランが見え始めていた。


どうやらここがこの町の中心部にあたるようだ。


あたしが暮らしている街に比べると、随分とさびれている。


「どうして駅前にはお店がなかったの?」


「昔はいくつかあったんだけど、数年前に大型のスーパーがこっちにできてから、どんどん潰れて行ったんだ」


「そうなんだ……」


言われて周囲を見回してみると、確かに全国的に有名なスーパーが場違いのように建っているのが見えた。


こんなに小さな町ではあれ1つできれば事足りるんだろう。


周囲のお店が潰れていくのも理解できた。


「知っているお店がなくなるのは辛いでしょ?」


「そうでもないよ。仕方がないし、時間の流れは変えられない」


唯人は真っ直ぐ歩きながらそう言った。


やけにアッサリしてるなぁ。


あのスーパーがなければ今も営業しているお店が沢山あったかもしれないのに、唯人はそういう事に感心が少ないようだ。


そう思っていると、不意に唯人が立ち止まり危うくその背中にぶつかりそうになってしまった。


「ちょっと、なに?」


文句を言うと、唯人が満面の笑顔で振り向いた。


「ほら、学校が見えてきた」


そう言い、指を指す。


その指を視線で追っていくと……周囲が森で覆われている丘の上に、灰色の建物が見えた。


「あれが……竹丘男子高校?」


「あぁ。そうだ。行こう」


唯人はそう言うと、大股で歩き出したのだった。