沙織と別れて会社の地下駐車場へと向うと

拓海が車に背を預けて待っていた。

今日はいつもと違ってスーツにネクタイ姿。


「拓海、ごめん待った?」


「お疲れ様。 

俺もさっき来たとこ」


拓海は助手席のドアを開けてくれる。

私は助手席に乗り込むと

運転席に乗る拓海を見て居た。


「どうした?」

不思議がる拓海。


「いつもと格好が違うから…」


今日、拓海はうちの会社の役員に挨拶に来ていたのだ。

ゆくゆく会社を継ぐ事になる為、拓海は

来月からうちの会社で働く事になっている。


「惚れた?」と冗談ぽく言う拓海。


「うん! 惚れた!」


「え? ミー…」


私の返事が思いもよらなかったのだろう

拓海は驚いて言葉を失っている。

私達はあれから何も変わらず

拓海も何も言わなかった。

いつも私の作る料理を美味しいと

食べてくれて、

私の髪を乾かしてくれて、

私の仕事の休みの日には

少しの時間でも空けてくれて

買い物に付き合ってくれた。

次第に自分の中に

拓海が居なくてはいけない存在に

なっている事を感じていた。

沙織に言われた様に

拓海の家柄や仕事の事は別に

考えることにした。

そうしたら自然と答えが出てきた。

だから素直に気持を伝えた。