『ルードがこの城に戻ってくるまでは、ウィル、お前が次期国王として私と共にこの国を守るんだ。いいな?』


それは二年前のこと。

現国王である父にそう命じられた私は、それから皇太子として公務にあたってきた。


兄がこの国に戻ってくるまでの、一時的なもの。

けれど私には皇太子という荷が重すぎて、皇太子としての毎日はそれはもう息苦しい生活だった。


そんな時、私の前に現れたひとりの女。

護衛から庭に倒れていると報告を受け、護衛と共にその場に向かい、メルンの花の上で寝ているユーリを見た時は、天使がどこかしらから迷い込んできたのかと思ったくらいだ。

メルンの花に囲まれ横たわるユーリは、それはとても美しかった。



陽の光で柔らかそうな黒い髪がキラキラと輝き、風にふわりと揺れる。

黒い髪に生える、白い肌。

どこか幼さを残す寝顔。

私の身体にすっぽりと収まってしまうような、小さな身体。

全てが美しく、そして愛おしく思えた。