備え付けの、バスローブのように前を合わせて着るタイプの寝着を身に付け、少し赤い目と鼻を俯き加減にして洗面ルームから出る。着替えたらお化粧直しして、それで少しは誤魔化せるかしら、と考えながら。

 するとそこに思わない二人の姿が在って、驚いたあまり変な悲鳴を上げてしまった。

「ふ、藤君っ?!」

「・・・着替え、持って来てやったんだよ。言っとくけど女の下着とか、赤ん坊のオムツと一緒だからな、オレは」

 不本意、とあからさまに書いた顔で紙袋をわたしに向かって差し出す彼。入り口の前には、坂下さんが直立不動で立っていて。慌てて小さく会釈すると目礼で返してくれる。

 藤君の、ふざけるなとばかりの釈明は、マンションのクローゼットから勝手に色々と見繕って来たことに関して、という事らしいのだけれど。
 それよりも。今まで何をしていたのかが丸判りな自分の格好とか、ベッドの乱れ具合とか、・・・当事者以外の人の目に晒されている羞恥の方がよっぽど重大で。男のひとって、気にならないのかしら。一人だけ顔を赤らめ、しどろもどろに。まともに藤君の顔も見られない。

「えぇと、はい。あの、ありが、と」

 化粧ポーチが入ったバッグと一緒に、また洗面ルームに逃げ込む。
 渉さんは昨日とは違う色合いのスーツに着替え終わっていたから、きっと坂下さんが用意したんだろう。
 
 藤君から手渡された紙袋から服を取り出す。
 広がった裾に大柄な花がプリントされたひまわり色の長袖Tシャツに、ワインレッドのシフォンスカート。・・・自分ではあまり組み合わせたことが無い、斬新なカラーコーディネイトに3秒ほど固まって。取りあえず鏡で見たら、明るいのにシックな雰囲気で纏まっていた。
 わたしだったらきっと、スカートは白とか淡い色で合わせてしまう。なんだか藤君の女子力って・・・すごい。