「おかえりなさいませ、お嬢様」


「え、あっ、やばかっこいい……!」



本日の馬渡は、最強にかっこいい執事に扮しております。


時は経ち、文化祭。


悲鳴とカメラのシャッター音の中にいる私は、既に耳が壊れそうになっている。


執事姿の私は去年よりも大人気のようで、我がクラスの喫茶店は外に長い列が出来るほどの大繁盛。


繁盛しているのは、とても嬉しいのだが。



「そろそろ紫乃の仕事時間、終わりだよね?」



そうなのだよ、さゆちゃん。


仕事時間の終了がもうすぐ迫ってきている。


ということは、私目当てのお客様を残してここを去ることになる。


………そんなこと出来るのか?



「紫乃にはデート行かせてあげたいけど、15分くらい延長で働いてほしいなー」



可愛らしいメイド服のスカートのフリルをいじりながら、文化祭実行委員のさゆが笑った。



「長谷部くんと文化祭回ること? デートじゃないよ、さゆ」


「いやぁ、デートでしょ。紫乃ったら何言ってんのー?」


「は?」


「ん?」



ダメだ、通じない。



「それより15分延長、やってくれる?」


「……ん、いいよ」



長谷部くんなら、わかってくれるだろう。


彼との約束に多少遅れてしまうが、私はクラスとお客様のためにもう少しだけ働くことにした。