カイドウとコブは狼狽えていた。

先ほどまで虫の息だった少女が、凄まじいエネルギーを発しながら、悠然とそこに立ち尽くしている。

それは、もはや人間の姿ではなかった。


背中には艶めく黒い羽。
血の色にも見える赤い眼光。
腕の半分が黒い羽毛に覆われた、まるで鬼のような手。

金色に光るバリアーのような球体の中で、体は電気を帯びたようにバチバチと放電していた。


「……っ! なんだあれはっ!」

「てめえ、何を注射したっ!」


カイドウは白衣の男を締め上げる。


「わっ、私は何も! ヒィ!」


"ビーン、ビーン、ビーン"


危険を知らせるセンサーが鳴り響く。


"カタカタ……ガタガタガタッ!"


机、ベッド、モニター、点滴台、薬品ケース、部屋にある全てのものが動き出し、まるで無重力であるかのように浮遊する。