「どうかしら?ドク」




わたしはドクの後姿に問いかけた。

ドクは振り向き、眼鏡を押し上げ難しい顔をした。





「だいぶ熱が高く衰弱が激しいですな…。
お嬢様が助けていなければどうなっていたか」


「……治るのよね」


「ええ。
暫くは解熱剤と栄養剤を点滴しつつ様子を見ましょう。

ところでよろしいのですか?」


「何が?」


「お嬢様のベッドに見ず知らずの少年を寝かせるなど。
お嬢様はどこで眠るおつもりですか?」


「わたしは床でもソファーでもどこでだって眠れるわ。

そもそも病人を床やソファーで寝かせるなんて真似、わたしには出来ないわ」


「まぁ……お嬢様が良いのであればよろしいのですが。

何かありましたら遠慮なくお呼びください。
ひとりの医者として、わたくしは彼を救い、お嬢様のお力になります」


「お願いするわドク」




ドクは自分の部屋から持ってきた包帯などの救護キットや

彼に刺した注射器などを鞄に仕舞うとわたしの部屋を出て行った。