☆シエルside☆






「っ」



こぼれ落ちた涙を拭いもせず、僕は部屋を飛び出した。

走っただけで息苦しくなる貧血を抱えた体。

僕はやけに幅の広い廊下に座り込んだ。




生きて、と言われた。

わたしのために生きて、と。




生きる理由なんてなかった。

あの人たちの道具として生きてきたから、生きる意味なんてなかった。

いつ死んでも良かった。




だからかもしれない。

自分の左手首を傷つけたのは。

逃げ道が欲しくて。

逃げることなんて許されなかったから。

生きているのだと実感したかったのかもしれない。





前はあんなにも切りたいと思っていたのに。

切れなかった夜は苦しくて耐えられなかったのに。

今は。






「切りたいなんて、思えないよ……」




全てはエル様が。

エル様が僕を変えた。

少しずつ、ゆっくりと変えてくれた。