lilac【思い出、友情】

それから数日後、休みをもらったリルはアーディ、メアと共に街を散策することになった。

本当はひとりで探しているあの人を見つけようと思っていたリルだったが、王都を探すにしてもあまりに広すぎるためアーディに協力を呼び掛けたところ、「人が多い方がいいだろう」というアーディがメアを呼んだのだった。

リルとしてはメアに事情を説明していないのに大丈夫だろうかと不安に思う一方で、メアと仲良くできる機会が生まれたことはとても嬉しいことであった。

王都に来てまだ日が浅いリルを思って、集合場所はフルリエルの前ということになった。

フルリエルの二階にある下宿部屋から階段を下りて外に出ると、すでにアーディが待ってくれていた。


「ごめん、待たせた!」


慌てて駆け寄るとアーディはぱっと顔を上げて首を横に振った。


「来たばかりだよ」


なんていい人だろうとリルは思った。最初から思っていたが、アーディはとても優しい。

オリバーも、リュートもとても優しい。人身売買をするような輩もいる国なのかと疑ってしまうほど、リルは周りの人々に恵まれていた。

ぶっきらぼうに思えるシオンですら、本当は優しい人なのだ。

シオンのことを思い出して、ふとリルは疑問に思った。


シオンは何者だろう。結局分からずじまいになってしまった。


「さあ、行こうか」


歩き出そうとするアーディにリルは慌てて止めに入る。


「まだメアが来ていないよ」


するとアーディは笑って言った。


「メアはまだ仕事中みたいだから僕達で迎えに行こう」