Marigold【友情】


数日後、リュートの店の火事は新聞で取り上げられ王都中に知れ渡ることとなった。

火事が起こったのが王都一の繁華街である天幕街のそばであるということはもちろんのこと、火事の原因が究明されていないことが関心を呼んでいた。

リュートの店は飲食店ということもあり、火事の原因は厨房に置かれていた揚げ物油だろうと新聞は言っていた。放火の疑いも拭いきれないとも書かれていたが、依然としてその原因や犯人は見つかっていない様子だった。

けれど悔しい思いをすることばかりでもなかった。

火事で店を失ったリュートの店は天幕街で再び出発することになったのだ。火事のことを聞き不憫に思った天幕街の店主達が話し合い、リュートの店が一時的に天幕を出すことを許可したらしい。

リュートは天幕街で料理を出し、店の建設費が賄えるまでは天幕に居続けると意気揚々と話していた。

リュートにとっては店を続けられないことが一番怖いことだと、それ以外は何とでもなるとも言っていた。

「顧客の火事見舞いをしてこい」というオリバーの計らいで、春咲きのハイビスカスを届けることになったリルは再び天幕街を訪れていた。

リュートから教えてもらった新たな店の場所が記された地図と天幕とを見比べながら見落とさないように探すがなかなか見つからない。

道を間違えたか、もしくは見過ごしてしまっただろうかと不安に思った時だった。


「おーい、リル!」


リルを呼ぶ声が聞こえた。