tatarian aster【遠く離れたあなたを想う】


リルはまた王城の前に来ていた。

というのも全てはオリバーが話してくれた仕事のためだ。


『お前に仕事をやろう』


そう言ってオリバーが店の奥から持ってきたのは、シオンの花束。

この花をシオンに直接届けて来い、というのが頼まれた仕事だった。

王都一の歴史を持つ花屋フルリエルが王城へ花を届けることはよくあること。

リルも従業員としてリコリス王女の誕生日に城へ花を届けに行った。

それを利用してシオンに会いに行く、というのがオリバーが考えついた方法らしかった。

それは今リルがおかれている状況の中で考えられる中では、一番確率の高い方法だ。むしろそれ以外の方法はない。


王城を守る門の前でリルは大きく深呼吸をして、王城の天辺を見つめる。


シオンが今どんな状況にあるのかは分からないけど、どうか会えますように。

心の中で祈って、一歩踏み出した。


「何者だ」


早速門番に呼び止められたリルは緊張しながら「花屋フルリエルの者です」と答えた。


「シオン…第一王子に花を届けに参りました」


訝しい顔をしていた門番だが、フルリエルの名前を出すと「そうか」とあっさり納得してくれたようだった。

ほっと胸を撫で下ろしたリルだが、門番は「ご苦労」と言ってリルの持っていた花束を取り上げようとした。


「シオン様には私共からお渡しする」