バブル時代には流行った街なのだろう。

その当時の雰囲気を残しながらも、客足が遠退いた夜の街。

だからと言って、全く人通りがないわけではなく、キャバクラやスナックが隣り合わせに並んでいるため、男性の足は疎らと言うには失礼になる程の人波はあった。

『ビリーブ』

ビルの2階にあるキャバクラだ。

そこの控え室でこんな会話が始まった。

「そう言えば、あのキモい客来なくなったね。」

「あ~…アイツ、ブチってるけどまだ毎日連絡来るよ。」

ショートカット金髪の女が携帯を指先で持ってヒラヒラさせながら答えた。

ロング黒髪の女が笑いながら返答する。

「キモい~!アイツ絶対、童貞だよね。」

「毎日、あいたん❤あいたん❤って死ねば良いのに。」

二人は大声で笑う。

扉が開いてボーイが顔をだす。

「あいさ~ん!お願いしま~す!」

あいと呼ばれた女は、イラッとした表情をして小さい声で目の前の女に言った。

「コイツもキモいんだけど…」

ロング黒髪の女がボーイに言い放つ。

「キモいから顔出すな!声だけでわかんだよ!」

ボーイは、出していた顔をゆっくりと引っ込める。


あいは、ソファから腰をあげて面倒くさそうに立ち上がり、こう言う。

「指命で、金持っててもジジイだとヤル気なくなるね。」

黒髪が答える。

「この商売の大変な所です!」

二人はまた大笑いすると、あいは控え室を出て行った。