次の日。

教室に入ると、笑い声で溢れていた。


花本美咲の席は、元々なかったように消えていた。

誰も、彼女の話をしていない。

誰も、悲しんでいない。


「あ、おはよ、佐崎」

「...おはよう。あのさ、花本って知ってる?」

「ん?誰だそれ」

「花本、美咲」

「芸能人?」

「いや...なんでもない、ごめん」


僕は席について、クラスメイトを眺めていた。

誰の心にもいない、花本美咲。

花本美咲は、いないものとされている。


クラスメイトの笑い声を、疑う。

本当に今、笑っているか?

花本美咲が死んだのに?


彼らは笑っているに決まっている。

彼らは泣くことが出来ない。

彼らは花本美咲を思い出せない。


すべて、僕がしたことだ。