入学式を終えたあと、先生にマスター棟ならぬものへ来るよう言われたあたしは意気揚々と指示された場所へ向かっていた。


……向かっていた、はずなんだけど。



「ここ、どこ」



いや、いやいやいやいや!

まさかの迷子!?


いいや、違う。断じて言おう。

この学園が広すぎるのが悪い!


そもそも地図のひとつやふたつくらい渡してくれたらいいのに、『学園の敷地内の端っこだ』なんて曖昧なお言葉しかくれないから、こういうことになるんだ。



「あ、」



ちょうど行く手にブラウンの木製ベンチに囲まれた大きな木を見つけて、あたしはタッと駆け出した。


それなりに高さはあるから、これに登れば自分がどこにいるかわかるかもしれない。


そう判断するがいなか、あたしはベンチの背に足をかけ木に飛び移る。


ものの10秒もかからずにてっぺんまで到達すると、ひょこりと先端から顔を出した。


思った通り、学園内がよく見渡せる。