「何を浮かれてるんだか知らないが、あいつには女がいるぞ」

だから、なに?

五十嵐さんの言っている意味がわからず顔を傾げた。

「忠告してやってるんだよ。口説かれてのぼせ上がっているようだからな」

なに言ってるの…この人?

「誰がのぼせ上がってるって?口説かれてないし、例え、口説かれたとしても…五十嵐さんに関係ないじゃん」

「……なら、なに言われたんだ?試して正解ってなんだよ」

初対面の人にもわかるぐらい気持ちがバレてるっていうのに、この人には届かないみたい。

「関係ないでしょう」

悲しくて目も合わせないで冷たく突き放した。

「関係ないって言うなよ」

視界に入る表情は、どこか曇って見える。

私達の間に何があるっていうの?

彼氏でもない

友達って関係でもない

ただ、昔同じ電車に乗り合わせた顔見知りぐらいで、偶然、再会して話すようになって数回…この関係をなんていうのかわからない。

私の片思いだけが一人歩きしてるだけ…

「おーい、恭平」

台の方から彼を呼ぶ声をした。

「行けば…あなたの番でしょう」

「……後で話そう」

テーブルの上に置いていた私の手をぎゅっと握ってから彼は向こうへ行ってしまった。