今日はいつもより少し蒸し暑い。

そんな日にどうして私は公園なんかにいるんだろう。

私のことを公園に呼び出した張本人――幼馴染みの佐野龍太――は約束の時間を忘れているのだろうか。

龍太が決めた約束の時間は10:00。
現在時刻は10:25分。
つまり遅刻。私の25分間返せ。

しかも呼び出した理由がまた私のことをイライラさせる要因のひとつでもある。

クラスでも一、二を争うガタイの良さを見込まれ剣道部に入部した彼は、例に漏れず馬鹿なようで。

いや、馬鹿なことは知っていた。
ただ、普通は中学入ったら気を引き締めて勉強頑張るもんじゃないの!?
と、龍太を怒鳴ったのはたしか昨日の夜のこと。

夏休みだというのに龍太は補習で学校に呼び出されていた。

そしてなぜか同じクラスで幼馴染みでもある私が付き添いをするはめになった。

なぜなら昨日ものすごい勢いで頼み込まれたから。
どのぐらいすごい勢いだったかというと……デカイ体をありえない角度まで折り曲げたので、背中が滑り台になりそうなぐらい。

いっそそのまま滑り台にしてこの公園に埋めてやろうか。

そんなくだらないことを考えていると手の中の携帯の着信音が控えめに鳴った。

汗で滑り落ちそうになったそれをあわててキャッチし、耳に当てる。


「はい、相沢えみりです。」

「ぷっ……電話でフルネーム言うやつ始めてみた…もし相手が不審者だったらどーすんだよ……くくっ……」

「……切るよ、それじゃ。」

「ご、ごめん切らないでお願い!」

「あんたねぇ……30分も遅刻しておいて何ふざけたこと言ってんのよ!だいたい補習もう始まってるでしょ?なにしてんの、寝坊?」

「そ、それが……」

私は次の龍太の言葉を理解するのに30秒かかった。




「ごめん、補習明日だった。」

「は、はぁぁ!?」