トントンッ





「かな?準備できたか?」 






ノックして入ってくる幸治さん。







「何もできてないな。」





慣れた手つきで部屋のタンスの中のパジャマを私のカバンに詰めはじめる。







私は、研修が延期になってしまったことを受け入れられないでいた。






だって・・・・・・、こんなはずじゃなかった。

  
 




進藤先生・・・・・・言ってくれたのに。







病院なら医者が側にいるから、何かあっても大丈夫って。







研修始まる前に、すごく不安だったけど、皆に応援されてその期待を裏切らないようにって、自分なりに頑張ってきたのに・・・・・・。









それなのに・・・・・・。








健診結果が良くないくらいで研修ストップなんて。








何かあったときの病院じゃないの?








どうして・・・・・・。










「ほら、かな行くぞ。」








幸治さんに無理矢理立たされ、手を引かれる。



 




抵抗する気力すらない。








今から向かうは、昨日までの職場。








今日から私は患者。








180度違う立場になる。








医者になって初めての入院・・・・・・。








しばらくはないと思ってたのに、意外と早かった。









またここに戻ってくるなんて。









見上げると、真っ白な天井に目に優しい色の蛍光灯。









殺風景な部屋・・・・・・。