約束の時間に警察に行くと、入り口に住吉とラビットが立っていた。
「成瀬さん……」
俺を見るなり目を伏せる住吉。
こいつ、俺が乱魔だって知ってんのかな……
「おい」
すると、下のほうで声がした。
もちろん、ラビットの声。
ってか、女なんだから『おい』はないだろ……
「一弥と呼べばいいか?」
そういえばそっか。
ここで『乱魔』なんて呼んだらそれこそなんのためにこうしてるのかわかんなくなるよな。
「あぁ、いい」
俺は……三崎でいっか。
「じゃあ、行くぞ」
つーか、マジでこいつが指揮を執ってんだな。
「雪兎、知由」
取調室に着くと、見覚えのある刑事がいた。
いつも俺を追っかけてたやつだ。
見るたびに『乱魔ぁ!』って叫ぶやつ。
そういや、住吉の父親なんだっけ。
「お父さん、こちら、成瀬一弥さん。成瀬優弥さんと咲さんのご家族」
俺は紹介され、軽く頭を下げた。
ってか、妙に緊張すんだけど。
バレたらやべぇよな、これ。
「そうか、君が成瀬一弥くんか。よかったな、犯人が捕まって」
ん?
……全然気付く気配がしねぇんだけど……
ホントに刑事か……?
「今、柏木の取り調べをしてるところだ」
住吉の父親は……
ってめんどくせぇ。
子供のほうは雪兎でいいや。
父親の名前、知らねぇし。
いや、正確には聞いた覚えはあるんだが、忘れた。
住吉はそう言って取調室の隣の部屋の扉を開けた。